【基礎演習 レッジョエミリアアプローチを学んで、レッジョナラを知る ~「語る」をキーワードに】
2月12日(土)@IID世田谷ものづくり学校 Studio
artenarra世田谷で一人の表現者として舞台に立つためには、まず、artenarra理念の基となるレッジョ・ エミリア市で開催の「レッジョナラ」や「レッジョ・エミリア アプローチ」のとらえ方、おとなや子ども、また、コミュニティーとのかかわり方を知ることが大切です。
というわけで講座4回目は、イタリア幼児教育実践研究家でartenarraアドバイザーの石井希代子先生とスタッフの栗林大空さんの登場です。石井先生はレッジョ・エミリア市に4年間滞在し、レッジョ教育の哲学はじめ歴史や背景、地域の共同性や文化などを総合研究して、帰国後、現在は各地でレッジョ教育に関する講座や講演、また教育コンサルティングなどをなさっています。

前半は「レッジョ教育 ®gionarra歴史と教育背景と地域の取り組み」についてスライドを見ながら石井先生のレクチャーの時間です。イタリアの小さな市レッジョ・エミリアは職人が多く、バルサミコ酢とパルミジャーノ・レッジャーノというチーズが名産です。時間をかけて美味しくなるものを育むその街は、新しいことを生み出すエネルギーのある街でもあります。
第2次世界大戦後の混乱の中「革新的な教育を!理想の学校を!」とトップダウンではなく、ボトムアップで始まった「レッジョ・エミリア アプローチ」は方法論ではなく実践法で、英才教育とは違い生きる力を伸ばす教育です。子どもの自主性を尊重し、学びの共同体をかたちづくり、空間環境デザインを重視し、地域ぐるみの子育て、教育を旨としています。
市民は、素晴らしい教育を受けとって終わりではなく、受けとった側が自分の周りの人々に教育のエッセンスをお返しする贈り物の循環が行われています。レッジョ・エミリア アプローチをベースに市民によって育まれた文化的イベントが「レッジョナラ」。(さらにそれを日本でも、ということで始めたのが「アルテナラ」というわけです。) レクチャーを受けて受講生の質問も活発です。「レッジョ・エミリアの若者は街を出て行かないのですか?」に対して先生は答えます。「皆、自分の生まれ育ったレッジョ・エミリアが大好きだから出て行かない」だそうです。


さて、後半はワークです。
最初は個人ワーク、「昔話と最新のアイテムを組み合わせたらどんなお話ができる?」に対する受講生のアイディアは、「ウサギと亀の競争をドローンで中継」したり、「花咲爺さんの様子がTikTok で大バズリ!」「大雪の中お米や野菜を運んできてくれたお地蔵様はウーバーJIZOUに??」といった奇想天外な物語がどんどん飛び出します。
次に不思議な素材がプリントされている紙に、自分でオリジナルな何かを書き足してみるワーク。絵が描けたら3人1組になって、その絵を組み合わせてお話を作ります。

ところで、今日はStudioの奥に、何やらいろいろな物が並べてあります。コルクやブラシ、タイル、金属の部品のようなもの、貝殻や布もあります。講座の開始前に栗林さんがきれいに並べていたその品々を皆なんとなく気になってちらちら見ていましたが、実はこれ、レッジョ・エミリア アプローチではお馴染みの廃材なんです。工場で出る廃材をレッジョ・エミリア アプローチのクリエイティブな活動に使うように寄付してくださるそうです。(本講座に持ってきてくださったのは、石井先生が日本で集めたものです。)
さていよいよその品々の出番です。石井先生は、「その廃材を使って効果音を作ってみては?お話に行き詰まったら触ってみると良いですよ、手は脳につながっていますからね」と声をかけています。


早速廃材を触りに来るグループもあれば、じっくりお話を組み立ててから素材を見に来るグループもあります。それぞれ廃材を触って吟味して、自分たちで作ったお話をさらに広げるのに使ったり、音を確かめて効果音に使おうと話し合ったりしています。
最後に3人1組で作ったお話を皆の前で発表します。皆に配られた小さな紙から発生したとは思えないオリジナルなストーリーと、小道具を使い、効果音もあるなかなか立派な発表パフォーマンスとなりました。



最後のまとめで、石井先生から「演じる側が楽しむことも大切」というお話がありましたが、みなさんそれはそれは楽しそうにお話を語っていました。そしてみなさんのチームワークの良さにもびっくりです!
前半のレクチャーと後半のワークを通して、自分の中のクリエイティビティを見つめ直した受講生も多かったのではないでしょうか?古いものと新しいものを組み合わせる、最初に描かれているものに自分で線を加えて新しいものを創り出す、それをつなげてお話を創り、皆で協力して語る…この先のアルテナラの発表につながっていく濃ゆ〜い一日でしたねー!