【基礎演習 表現3:即興演劇(インプロ)を学ぶ】
2月26日(土)@ IID 世田谷ものづくり学校 Studio
講座5日目のこの日は、講師に直井玲子さん、清野里央さんをお迎えして、即興演劇(インプロ)について学びます。このインプロの要素を学ぶプログラムは今年度のアルテナラ講座から初めて組み込まれた内容です。

アルテナラが大事にするレッジョナラのパフォーマンスは、観る人と演じる人の境目が曖昧で、だからこそその場にいる人たちが当事者意識を持って、イベントに関わることができているのだと思います。その観点から、観る人とインタラクティブに関わり、「一緒に場を作る」という意識を受講生に持ってもらいたいという思いを込めて、この内容を新しく盛り込みました。前回の石井先生による既存のものに捉われずに「物語を創造する」観点とともに自分たちのパフォーマンスを作っていってほしいと思います。
さて、この日、直井さんから最初に伝えられたのは、「Be Average. Give Your Partner a Good Time.(がんばらない。相手に良い時間を与える)」。というメッセージでした。このメッセージからも、演じるパートナーとも、観る人とも、一緒に場を作るという想いが伝わってきます。

全員で自己紹介をした後、ウォーミングアップを兼ねて拍手回し、その延長線上に「リア ハンド ホップラ」というワーク。これは「リア」「ハンド」「ホップラ」の掛け声とともにグループ内のメンバーでパスをつなげていきます。それぞれちょっとした動きが入るのですが、これがなかなかに難しい。動きと掛け声がうまくリンクせずに止まってしまうことも。でも、このワークの狙いは「失敗する練習」。失敗も受け入れられる空気感を育んでいきます。

次に行ったのは「What Comes Next」。ペアになり、一方からの「次どうするの?」という掛け声に合わせて、即興的にお話を作っていきます。最初はアイディアが浮かばず、つまるシーンも見られましたが、即興的に作って、即興的に演じてを繰り返すことで、皆さんどんどんとテンポ良く作っていけるようになっていました。慣れってすごいね!

ここで直井さんから物語の「構造」についてレクチャー。話が広がりすぎないように、あえて縛りを入れる(森に冒険に行こう、ピラミッドに冒険に行こうなど)ことや、ウロボロスの蛇をモチーフに、始まりに戻ることで物語を締めくくるという手法を学びました。
休憩を挟んでここからは、「声」に関する練習。S音・Z音・M音の発声の練習から、自分の出せる一番高い声・低い声を出してみます。このワークの最中、受講生からは「自分の声は1つ、多くても2つくらいかと思ったけど、これだけ多く出せることがわかって、いろんな役を演じられるかも」といった感想が聞かれました。
出せる声の違いを知った後は「ステータス」について体験。性格や立場が与えられるとパフォーマンスにはどんな影響が出るでしょう?
他者と接する際に、「目を見て胸を張って」接する人、逆に「あまり目を見ずに自分に触れながら」接する人、受け答えの際に「間髪入れずに」返す人、「間をあけて」返す人、他にも、家族の中で「強い人」「弱い人」といった立場が与えられると、表現にはどんな違いが現れるか、演じ分けてみます。
「ステータス」が与えられることで、詳細まで伝えずともそれぞれの性格や関係性が滲み出てきます。これらも自分たちのパフォーマンスに活かせるといいですね!
この日も残り半分。後半は7つの演劇的手法を学んでいきます。題材となるのは、教科書でもお馴染み「ごんぎつね」です(内容の記憶が曖昧という方はネットで全文公開されているので読んでみてね)。
ごんぎつねに登場する村を全員を表現する(①静止画、②思考の軌跡)から始まり、直井さんがごんになりきり、受講生からの質問に答えていくインタビュー(③ホットシーティング)、受講生が会議参加者となり、ごんをどう対処するかの有識者会議(④専門家のマント、⑤ティーチャーインロール)、全員が村長にアドバイスするシーン(⑥プロムナード)を経て、結果、ごんは兵十に殺されてしまうわけですが、死後のごんと兵十の対話(⑦ロールプレイ)で締め括られるという展開。
7つの手法を用いてごんぎつねのストーリーを追ったのですが、客観的な立場で見ていた身としては、サイドストーリーを見ているようでした。(担任・佐藤はちょっと泣きそうになったよ)


次に行ったのは、指導者になる人によく行うというイルカの調教ゲームというワークです。対象となる人を調教されるイルカに見立て、事前に決められた動作をするように誘導します。自由に動いている対象者に対して、目標とする動作に近い行動をしたら褒める、この繰り返しで目標に到達させます。伝えたいことがいかに伝わらないかを知ってほしい、モチベーション高く続けてもらうには褒めるタイミングが重要というニュアンスを受講生に理解してもらいたいとのことでした。これからパフォーマンスを作っていく際に大事な心構えになりそうです。

この日の集大成は、直井さんが師事するキース・ジョンストンの代名詞とも言える「タイプライター」に、みんなでチャレンジです。作家役(清野さん)が描いたシーンに合わせて受講生は即興的に物語を作っていきます。大枠は作家役の人が作るものの、どんな展開にするのかは自由。どのタイミングで出ていくのか、どんな要素を組み込むのか、瞬間的に判断して全員が関わりながらお話を進めます。今日の最初は詰まったり止まったりしていた人も、また普段はそんなに前には出て行かない人も積極的に関わっていたのが印象的でした。恥ずかしさなのか、遠慮なのか、それらが少し吹っ切れたように感じられました。
それを象徴するかのように、この日の講座後、受講生からは「周りを信じる」「誰かがなんとかしてくれる」といったコメントが聞かれました。いいですね〜。この関係性があれば本番に向けたパフォーマンスもしっかり作っていけそうです!



また、この日の最後に本番のパフォーマンスグループのメンバーが発表されました。どんなチームになったのかは、また追ってお知らせします。どうぞお楽しみに!